庭というものは、不思議なものである。 人が手を入れぬままに季節をひとつ越せば、草はたちまち勢いづき、まるでこの地を本来の姿に戻そうとするかのように伸び広がる。
光善寺の庭も例外ではなく、初夏の陽気に誘われた草たちが、いつの間にか一面を占領していた。
この庭にはバラをはじめとする花々が点々と植えている。 営みの褒美ともいえるそれらを傷つけぬように草を刈るとなると、昔ながらの鎌では骨が折れ、かといって大きな草刈り機を振り回すことは難しい。
草は短いうちに刈っておくと翌年は伸びにくいーそんな、どこか農家の知恵のような話を耳にしていたから、早く手をつけねばと気持ちは急いだ。
ふと思い立って町のホームセンターへ。店内の空気は、どこか現代日本の縮図のようである。 効率と便利さを追い求める道具が整然と並び、その一角に「女性とシニア向け」と銘打たれた軽量の充電式草刈り機が、まるでこちらを待っていたかのように展示されていた。
時代は、扱いやすさを求める方向へと確かに進んでいる。 その流れの中に、私自身もまたしっかり巻き込まれているのだと感じた。
この小さな機械を手に取ると、妙にしっくりと馴染んだ。 庭の草を相手にするという、ささやかな営みの背後に、文明の歩みがやさしく背中を押してくれる。 そんなことを思いながら、私は購入した。