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日記

キツツキの巣穴

朝、お寺のまわりを歩いていると、山里特有の静けさが、ゆっくりと身の内に沁みてくる。その静寂を破るように、コン コン コン……と小さな音が、どこかこだまのように響いた。

音の方へ歩を進めると、100年はとうに過ぎた紅梅の幹に、つい先ほどうがたれたばかりの穴があった。穴の色がまだ新しい。これはクマゲラの仕業にちがいない、と旅人が古道でふと歴史の痕跡に出会ったときのように腑に落ちた。

クマゲラは深山の鳥で、この里山ではまず姿を見ることはなかった。にもかかわらず、いま目の先で、人を恐れず営みを続けている様子だ。思わず子供のように胸が高鳴った。巣作りの始まりかもしれぬ、と一瞬は想像したが、実際には虫を探していただけかもしれない。

それでも、朝の澄んだ空気のなかで、一本の古木と一羽の鳥によって演じられる小さな事件が、「未来の幕開け」のように思われた。

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