2001年から書き継いできた「石見談話室」と「教えの庭から」の原稿を、このたび整理した。気がつけば四半世紀に及ぶ歳月である。家人が、まるで遺言でも扱うかのように、ていねいに保存してくれていた。
年に8度ほど筆をとってきたから、200ページほどの随筆本になる。
まとめながら、ふと目にとまったのは、各回につけたタイトルである。タイトルとは、書き手の心のアンテナが、その瞬間どの方向へ向いていたかを示す記録のようなものだ。それを眺めていると、当時の自分の視線がどこに落ちていたのか、何に驚き、何に心を動かされていたのかが、確かに蘇ってくる。
興味深いのは、視点が少しずつ変化している一方で、根底に流れる関心の源泉は、ほとんど揺らいでいないという事実である。
人は環境が変わり、出会う人が変わることで、思考の角度を変えてゆく。しかし、その刺激がなければ、たちまち日々は平板になり、筆もまた惰性に流れてしまう。原稿の束を前にして、そんな当たり前のことを、あらためて教えられた気がした。