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日記

決断

人は生きてゆくうえで、折々に「決断」という峠に立つ。 これからどちらへ歩むのか、その方角を定める行為である。 しかし、その決断を下す「今」という瞬間は、つねに昨日までの生活体験や思考の延長線上にある。 ゆえに、まったく新しい道が、ある日ふいに眼前へ開けるということは、稀である。

それでも世間を見渡せば、風景は絶えず移り変わっている。 自分自身も、人々の暮らしも価値観も、川の流れのようにとどまることはない。 その変化のただ中に立つと、己もまた新しい生き方や方向を探し出さねばならぬ、そんな思いに駆られるのだ。

ところが、新しい道というものは、かならず不安を伴う。 人は経験したことのないものに対して、どうしても足がすくむ。 これは古代の旅人が、未知の峠を前にして立ち止まったのと、 なんら変わらぬ心の働きであろう。

それでも一歩を踏み出せるとすれば、 その新しい生き方や方向が、人を満足させるものかどうか、しっかりに想像してみることに尽きる。 もしその想像が、心の奥で世の中の楽しさを感じるならば、その道は不安を忘れさせ、むしろ背中を押してくれるに違いない。

決断とは、未来の自分がいまの自分に手紙を送ってくるようなものだ。 その手紙をどう読み解くかで、人生の風景は大きく変わってゆく。

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