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日記

高所恐怖症

旅というものは、人の心の襞を照らし出すようだ。この日、海峡ゆめタワーの30階から降るエレベーターの中で、私はそのことに気づかされた。

初夏の海風がやわらかく吹き、海峡の島々は、まるで古地図の挿絵のようにくっきりと浮かんでいた。ところが、同行の男性は、高所が苦手だという。上りのエレベーターの隅で身を縮め、展望室に着いても窓際へは近づこうとしなかった。

高所を恐れる人がいることは、もちろん知っていた。しかし、目の前でその恐怖に立ちすくむ姿を見ると、人間というものの不思議さが去来する。

彼は、おそらくこれからの人生で、こうした眺望を味わうことはないのだろう。だが、それは決して人生の欠点ではない。人はそれぞれに、得手不得手を抱えながら生きている。むしろ、その短所を避けつつ、長所を育てて暮らしてゆくのが、人間の営みというものだ。

そう思うと、眼下に広がる海峡の景色が、どこか人の生き方そのものを象徴しているように映った。私はしばしその光景を堪能し、男性と一緒にタワーを降りた。

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