事実が人々の脳裏に落ちるまでに、驚くほどの歳月を要することがある。悪い噂は、まるで風のように駆け抜けてゆくのに、良い変化は、しばしば地中をゆっくりと流れる地下水のように、誰の耳にも届かぬまま終わることさえある。
経営に携わる者や、何かを主催する者は、この世の理を、ひとつの真実として胸に置いておくべきなのだろう。
昨日の集まりで、お茶を差し上げた折のことである。お二人のお方が「これはどこのお饅頭ですか。たいへんおいしい」と言われた。その饅頭は、どこか名のある菓子処から取り寄せたものではない。市内の、昔からある一軒の菓子屋のものだった。
思えば先代の主人を見かけるたび、どこか清潔さに欠ける印象があり、私はその店の菓子を買うことを避けていた。ところが、たまたまいただき物として手元にあった饅頭を口にし、あとでそれが「あの店」のものだと知ったのである。
経営者が代替わりして、しっかり10年は経つだろう。その10年のあいだに、店は静かに腕を磨き、味を変え、顧客を増やそうとしていたに違いない。だが、その変化が世間に知られるまでの時間の長さ──そのことに、私は驚かされた。
人の評価とは、かくも厄介なものであることは知っておこう。