家人が、今年も梅をつける支度を始めている。どうやら今年は梅の当たり年らしく、知人から届いた籠には、青く張りのある実がこぼれそうだった。
広口の瓶を取り出し、梅を洗い、へたを取り、氷砂糖を重ねていく。その手つきは、まるで季節の儀式を執り行う少女のようである。
梅という果実は、陽光の強い日ほど、その存在感を増す。庭仕事で汗を流したあと、木陰で氷水で割った梅ジュースを口に含むと、甘酸っぱい液が喉をすべり落ち、体の奥にまで涼気がしみわたる。その瞬間、人は自分が自然の一部であることを、ふと取り戻すのかもしれない。
例年のように、今年も同じように汗をかけるかどうかはわからない。体力というものは、季節と同じく、知らぬ間に移ろっていく。それでも家人は梅を漬ける。
お茶室の隅に置かれた瓶の底から、やがて琥珀色の雫がにじみ出し、ゆっくりと満ちていくだろう。その色は、まるで梅自身が「今年もよろしく頼む」とささやいているようでもある。