昨日の朝、町角に立つ選挙ポスター掲示板をふと撮影しておいた。 まだ何も貼られていない、無機質な板である。 ところが3時間後、同じ道を通ると、そこには候補者たちの顔がずらりと並んでいた。 さきほどまで冬木立のように寂しかった掲示板が、急に色彩を帯び、町に春が差したようで、思わず足を止めた。
投票日まで、あと一週間。 この山里にも、やがて選挙カーの声がこだまするだろう。
人口2万4千人の小さな町に、14人の議員が選ばれる。 その数は、古い村落の寄り合いを思わせる。 人々の暮らしをどう守るか、誰がどのように舵を取るか――そんな問いがにじんでいる。
立候補者の公約は、まだ手元に届かない。 おそらくは、人口減少や格差、物価といった、いまの日本が抱える影の部分を語る文言が並ぶのだろう。 しかし、私が願うのは、今回の前職の方々には、まず4年前に掲げた公約を、自らどう評価するかを語ってほしいという一点である。
政治とは、未来を語るだけの営みではない。 むしろ、過ぎた時間にどれだけ責任を持てるかという、古来よりの人間の試金石である。 その意味で、掲示板に並んだ色とりどりの顔ぶれを見ながら、私はふと、町の歴史の一頁がまた静かにめくられようとしているのを感じた。