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日記

ご馳走とは

企業で活躍する人々を迎える研修会の準備が進むなか、夕餉の献立をどうするかという話題になった。参加者の日常を想像しながら、季節の食材をどう生かすか、どんな調理がふさわしいかと意見が飛び交う。

そのやりとりを聞きながら、ふと「現代のご馳走とは何だろう」と考えていた。

かつてのご馳走とは、客人のために近隣を駆け回り、手に入る限りの食材を集め、工夫して調理したものを指した。つまり“馳走”とは、もてなしのために走り回る行為そのものを意味していたのである。

ところが今は、世界中の料理が町にあふれ、珍しい食材も指先ひとつで手に入る。便利になった反面、「走り回る」という行為はない。

それでも、漁師が海辺で手早くつくる素朴な漁師めしや、修行僧が無骨に整える精進料理が、かえってご馳走として扱われるようになった。非日常の味、土地の記憶を宿した料理が、人の心を動かす時代になったのだろう。

光善寺では、「お寺ご飯」と称して郷土料理を振る舞うことにしている。寺という場は、日常の延長にありながら、どこか時間の流れがゆるやかで、季節の気配が濃い。そこで供される料理は、豪華さよりも、土地の恵みと手間の温度が伝わるものだ。
ご馳走とは、「心を運ぶ料理」なのだと、献立の相談を聞きながら思った。

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