庭園墓のモミジに、白い包帯が巻かれた。と書くと、まるで人間の負傷を思わせるが、実際には庭師が薬剤を塗り、その上から丁寧に巻いたものである。
庭師の話によれば、モミジの内部には時折カミキリムシが、樹皮を噛み破って入り込み、産卵するという。虫にしてみれば、子孫を残すための、大切な営みである。だが人の側から見れば、大変迷惑な行為である。
その「気配」を察した庭師は、すべての樹に薬を塗り、包帯を巻くことにしたのだという。プロフェショナルの勘とは、こういうものだろう。
自然を愛でるという行為は、しばしば美しい。しかし、自然を支配しようとした途端、たちまち反発を受ける。人間の都合など、自然界にとっては取るに足らぬものだ。
それでも、人が誠意をもって樹を守ろうとする姿勢は、どこかで伝わるのだろう。自然は無言のまま、しかし確かに応えてくれる。人と自然のあいだに、新しい秩序が生まれるとすれば、こうした静かな対話の積み重ねからなのかもしれない。