お寺の境内の一角に、一本の旗竿が立っている。 50年ほど前に設置したもので、見上げれば10メートルはあろうかという丈である。 法座の日には、ここに仏教の旗が風を受けてひるがえる。 その色彩が空の青に映えるとき、お寺はいつもより少しだけ凛とした気配を帯びる。
ところが、その旗を掲げるロープが、次第に擦り切れ始めていた。 滑車の穴を通る部分が、長年の摩擦で繊維をほぐし、先日、ついに通らなくなってしまった
新しいロープを結びつけて取り替えようとしたが、詰まって動かない。 旗竿というものは、普段はただそこに立っているだけだが、いざ不具合が起きると、人の手の届かぬ高さが急に牙をむく。
結局、高所作業車を呼び、ほぐれた部分を修復し、ようやく繋ぎ換えることになった。 思えば、もっと早く手を打てばよかったのだ。 先延ばしにした小さな問題が、ある日ふいに大ごとへと姿を変える。 お寺の営みもまた、世間の暮らしと同じく、そうした「ほころび」を抱えながら続いていく。
それでも次の法座には、いつものように仏旗を掲げて、皆さんを迎えることができそうだ。風にひるがえる旗が、聞法をお勧めするようにはためくことを想像しながら作業を見ていた。